▼なぜアメリカでコンピュータとネットワークが発達したのか? それはブッシュさんとリックライダーさんというビジョンを持つ人がいたから。この二人の共通点は、ビジョン、仕組み、資金、キーパーソンを持っていること。
▼ヴァネバー・ブッシュさん(1890-1974、10月26日参照)がアメリカの軍学産体制のビジョンを持って土台を作った人。いわば大きな根だ。ブッシュさんより25才若いリックライダーさんは軍産学体制の上でビジョンを持ってコンピュータをつなぐインターネットの土台を作った人。いわば根から立ち上がった幹のひとつだ。
▼ブッシュさんが資金を配分する立場であったのと同じくリックライダーさんも将来ビジョンの実現つながりそうな研究者に資金を配分した。その結果、タイムシェアリングの技術、UNIX、インターネット、パソコンへと結実していく。
J・C・R・リックライダー Joseph Carl Robnett Licklider 1915-1990 コンピュータ科学者
1915年、ミズーリ州セントルイス生まれ。
教育
1937年(22才)セントルイスのワシントン大学で3つの B.A. in physics, mathematics, and psychology
1938年(23才)セントルイスのワシントン大学で M.A. in psychology
1939年(24才)WWII。
1942年(27才)ロチェスター大学で Ph.D. in psychoacoustics
活動
1943年(28才)ハーバード大学で研究員、心理音響研究所で講師(1950年まで)。
1945年(30才)WWII終戦。
1950年(35才)情報技術に興味を持ちMITに移籍しassociate professor。リンカーン研究所の設立に協力。技術学生のための心理学プログラムを開発。冷戦に備えたコンピュータ支援型の防空システム Semi-Automatic Ground Environment (SAGE)の開発に尽力。
1951年(36才)音響心理学の論文 “Duplex Theory of Pitch Perception” 発表。
1957年(42才)MITを辞め Bolt Beranek and Newman (BNN)の副社長。工学心理学者協会からFranklin V. Taylor Awardを受ける。
1958年(43才)アメリカ音響学会の会長。
1959年(44才)英国のコンピュータ科学者 Christopher Strachey氏からタイムシェアリングの概念を教えてもらい、 BBN Time-Sharing Systemを開発。
1960年(45才)論文”Man-Computer Symbiosis”で現代につながるインタラクティブなコンピュータの利用方法を描き出す。
1962年(47才)論文”Intergalactic Computer Network“(銀河間コンピュータネットワーク)発表。米国防省の国防高等研究計画局ARPAの Information Processing Techniques Office (IPTO)のヘッド(1964年まで。後任にアイバン・サザランドさんを指名)。有望な技術に資金を配分。MITのProject MACにも資金を出す。これは大型コンピュータに端末を接続し最大30人が同時に利用できるシステム開発計画。このほかスタンフォード大学、UCLA、UCバークレーなどにも資金を提供。
1963年(48才)タイムシェアリングネットワーク構想のメモを仲間内に配布。これが後のARPANET、今日のインターネットの基。
1964年(49才)IBMの Thomas J. Watson 研究センターでinformation sciences, systems and applicationsのマネジャー(1967年まで)。
1968年(53才)MITに戻り教授(電子工学)。Project MACのディレクタとしてCompatible Time-Sharing System (CTSS)や Multicsを推進(1971年まで)。Multicsはベル研のケン・トンプソンさんやデニス・リッチーさんがOSのUnixを作る刺激になる。 論文 “The Computer as a Communication Device” 発表。
1974年(59才)IPTOのディレクターを務める(75年までの一年間)。
1979年(64才)インタラクティブゲーム会社Infocomの設立者に加わる。
1985年(70才)MITの名誉教授。
1990年(75才)マサチューセッツ州アーリントンで死去。
https://en.wikipedia.org/wiki/J._C._R._Licklider
https://ja.wikipedia.org/wiki/J%E3%83%BBC%E3%83%BBR%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC