▼キー・アントネッリさんはENIACを動かすために最初に選ばれた6人の計算手（computer）の一人。
▼数学力を活かせる職場を探し、求人広告で知ったアメリカ陸軍の弾道研究所BRL での計算手に友人のバイラスさんと相談して応募、二人とも採用される。BRLでは砲弾の計算をV・ブッシュさん（10月26日）が開発した微分解析機を使って進める。そうしているうちにENIACが完成、ENIACのプログラマとしてバイラスさんと抜擢される。
▼ENIACを使いこなすため、エンジニアや仲間と相談して創意工夫を重ねる。ENIACは本番の計算にかかる前の準備に数日を要していたので、この時間をいかに短くするかがプログラマの腕の見せ所だったようだ。アントネッリさんはサブルーチンを発明する。
▼エッカートさんとモークリーさんがペンシルベニア大学を辞めてEMCCを起業し、仲間の女性プログラマのうち2人が合流。アントネッリさんはENIACが大学からアバディーンにあるBRLに移設され、一緒に転居していた。しばらくしてBRLを辞めモークリーさんと結婚してEMCCに合流。プログラマとしてUNIVACのプログラミング開発を進める。同僚にENIAC時代の仲間のほかに、Harvard Mark IIIの開発を終えてEMCCに参加したグレース・ホッパーさん（10月19日）がいる。このように、女性プログラマたちが企業に所属してENIACのDNAを守り育てていたことも、アメリカでコンピュータが発達した理由のひとつだ。
キー・アントネッリ Kay Antonelli 1921-2006 最初期のプログラマ
名前の表記が複数ある：キャスリーン・リタ・マクナルティ Kathleen Rita McNulty
結婚後 キャスリーン・マクナルティ・モークリー・アントネッリ Kathleen McNulty Mauchly Antonelli
1921年、アイルランドのドネゴール県生まれ。父はアイルランド共和軍の軍人。
1924年（3才）家族でアメリカのペンシルベニア州フィラデルフィアに移住。
教育
チェスナットヒルにあるカトリック教区学校。
フィラデルフィアにある J. W. Hallahan Catholic 女子高校。代数や幾何で年間のトップ賞を連取。
チェスナットヒル女子大学。微分計算、偏微分方程式、統計など数学のコースは全て取り、就職に備えて会計、経済学、統計などビジネス・コースも受講。
1942年（21才）チェスナットヒル女子大学を数学の学位を取って卒業。同級生のバイラスさんと仕事を探す。
活動
1942年（21才）アメリカ陸軍弾道研究所BRLの計算手computerとして採用が決まる。バイラスさんも一緒。機械式卓上計算機で弾道軌道を計算し射表を作成する仕事。ペンシルバニア大学ムーア・スクールの教室が仕事場。
アデル・ゴールドスタインさん、メアリー・モークリーさん（モークリーさんの奥さん）らから研修を受ける。砲ごとに1,800の軌道計算が必要。1軌跡の計算時間に30〜40時間かかった。
バイラスさんと共に当時のアメリカに3台あった最先端のアナログ計算機である微分解析機（40時間の計算が50分でできる）を使用。じき作業監督になる。
1945年（24才）ENIACのプログラマに選ばれる。アバディーン性能試験場でENIACの入出力装置であるIBMのパンチカード装置の使い方の研修を受ける。
ENIACで弾道計算するとき、プラグとスイッチを整えるセットアップに1-2日（テストプログラムが大半）、計算は10秒。できるだけ短かい時間で済むようプログラミングの手順を決めるのが、アントネッリさんたちプログラマの責任。IBMの技術者アーサー・バークス氏らと協力してENIACのプログラミング方法を追求。サブルーチンを発明。
1945年（24才）WWII終戦。
1946年（25才）モークリーさんとエッカートさんがペンシルベニア大学を辞め、EMCCを創業。2人の女性プログラマが合流。モークリーさんの奥さんメアリーさんが水難事故で死去。
1947年（26才）ENIACがアバディーンのBRLに移設されるのに伴い一緒に移動。
1948年（27才）モークリーさんと結婚。EMCCでBINACやUNIVAC Iのソフトウェア設計に携わる。
1950年（29才）EMCCがレミントンランドに買収されUNIVAC部門になる。
1955年（34才）レミントンランドがスペリーに買収、スペリーランドになる。UNIVACコンピュータシリーズで成功。
1980年（59才）モークリーさん死去。ENIAC関係者の紹介記事を書いたり講演活動を行う。
1985年（64才）写真家のセベロ・アントネッリ氏と結婚。
1996年（75才）セベロ氏死去。
1997年（76才）オリジナルのENIACプログラマたちと共に Women in Technology International の「女性技術者の殿堂」に入る。
2006年（85才）死去。
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